
ドライアイスの「昇華」とは?
1. 固体から直接気体へ!液体の状態をスキップ
- 昇華の最も重要な特徴は、固体が液体にならずに、直接気体になる現象だということです。
- 通常、物質は固体 → 液体 → 気体と状態が変化しますが、昇華する物質は真ん中の「液体」を飛び越えてしまいます。
2. 逆に気体から直接固体へも昇華!
- 昇華は、固体から気体への変化だけでなく、気体から直接固体になる現象も含まれます。これは「凝華(ぎょうか)」とも呼ばれますが、広い意味では昇華の一部として扱われます。
- 例としては、冬に窓ガラスにつく霜(水蒸気から直接氷になる)などが挙げられます。
3. なぜ昇華が起こるの?
- 物質にはそれぞれ「三重点」と呼ばれる特定の温度と圧力の組み合わせがあります。この三重点では、固体・液体・気体が共存できます。
- 昇華が起こるのは、圧力が三重点の圧力よりも低い場合です。この条件では、物質は液体として存在することができず、固体は直接気体へ、気体は直接固体へと変化します。
- ドライアイス(二酸化炭素)の場合、大気圧(約1気圧)が二酸化炭素の三重点の圧力(約5.1気圧)よりもはるかに低いため、常温常圧では液体にならずに昇華するのです。
4. 日常生活にある昇華の例
- ドライアイス: 最も身近な昇華の例ですね。白い煙(水蒸気の凝結)を出しながら、固体から気体に変わります。
- ナフタレン(防虫剤): 衣装ケースなどに入れる防虫剤の白い固まりが、いつの間にか小さくなっているのは昇華しているからです。独特の匂いも気体になったナフタレンによるものです。
- ヨウ素: 実験でよく使われます。加熱すると紫色の気体(ヨウ素蒸気)になり、冷やすと直接固体に戻ります。
- 凍結乾燥(フリーズドライ): インスタント食品や宇宙食などによく使われる技術です。食品を凍らせた後、減圧して水分を昇華させて取り除きます。これにより、栄養や風味を保ちつつ、長期保存が可能になります。
- 霜: 冬の寒い朝、空気中の水蒸気が直接氷の結晶になる現象です(凝華)。
- 雪: 大気中の水蒸気が氷の結晶として成長し、降ってくるのも昇華(凝華)の一種と考えられます。
5. 昇華を使った面白い応用例
- ドライアイスブラスト洗浄: 上述の通り、ドライアイスの粒を吹き付けて汚れを除去します。水を使わないので、電子部品や精密機器の洗浄にも有効です。
- 昇華型プリンター: インクを熱で昇華させ、紙に転写するタイプのプリンターです。写真印刷などで使われ、色合いが滑らかで高画質なのが特徴です。
- 衣料品のプリント: スポーツウェアなどによく見られる鮮やかな昇華プリントは、インクを直接繊維に昇華させて定着させるため、色落ちしにくく、通気性を損ないません。
昇華は、一見すると地味な現象ですが、実は私たちの生活や様々な技術に応用されている、奥深く面白い状態変化なんです。
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